My MX-6 Final Spec |
2002年7月18日夜,子供を早々に寝かせると,僕はTシャツとジーパンにおもむろに着替え家を後にした。
2日後には,もうMX-6は僕のところからいなくなる。だから,今夜は僕とMX-6だけのラストドライブに出かけるんだ。
独身貴族(言い過ぎ)⇒結婚⇒長男誕生。多分僕の人生の中で一番重要なイベントがたくさんあった時期をこのMX-6と共に過ごした。「記憶が走馬灯のようによみがえる。」とは多分こんな感じを言うのだろう。今,僕の頭の中には,MX-6と共にすごした楽しい時間,つらかった時間を思い出している。
MX-6の周りを1周してみる。やっぱり今見ても綺麗な形だ。こんな造形美を持った車には果たして今後出会えるのだろうか。
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見てよ,このスタイル!絶対他のクルマには無いよ! |
MX-6のデザイナーはかつてこんなことを言っていた。
「ホテルやレストランの駐車場に車を止めて目的の場所に行くとしましょう。車を離れて移動するときに,思わず振り返ってしまうスタイリング。そんなクルマを創りたかったのです。」
その通り。僕は,いつもMX-6をとめると,必ず振り返ってMX-6の存在を確かめ,そのスタイリングを眺めながら移動していた。帰宅したときでも,会社の駐車場でも,遊びに行ったとき,スキー場,出張先,・・・
必ず振り返っていた。
月明かりに照らされて,夜でもビンテージレッドのボディーがつややかに輝いている。どこかの若奥様にコンビニの駐車場でおもいきり当たられ傷がついてしまったけど。
あの時はショックだったなぁ。MX-6の左隣に止まってた車がバックで出て行くときにMX-6の左フロントフェンダーからドアまで削っていったもんなぁ。あの音は忘れられないよ。
でも,やっぱりこのVintage Redはきれいだ。今となってはウル覚えで,本当かどうかわからないけど,このVintage Redだけは,他の色よりも倍のコストがかかっていたってことを聞いたことがある。バブル時代の車だからこそ成せた技かな?
今のマツダ車にも輝くような赤,「クラシックレッド」と言うのがあるけど,やっぱりVintage Redのほうが綺麗だと思うな。
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9年以上経った赤とは思えない艶です。別段特別な洗車とかはしてないんだけど・・・ |
しんとした夜空の月に照らされたMX-6をしばし眺めた後,RECAROのシートに身をしずめた。こいつを買いにいく途中,スピード違反でつかまったっけなぁ。
キーをひねる。V6サウンドがめざめる。今,MPVやトリビュート等,マツダでラインアップされているV6エンジンモデルはフォード製のエンジン。よく考えたら最後の生粋のマツダブランドV6エンジンはこのMX-6の心臓であるKL型かもしれないなぁ。
するすると走り出す。・・・どこへ行こうか。手放す前に僕とMX-6の二人(?)でラストドライブに行こうというのは決めていたけど,実はあまり行き先を決めてなかった。気が向いた方向へ走り出す。倉吉を抜けるとまずは三朝へ。ここへはよくMX-6で真夜中の温泉に入りに来たものだ。
三朝のような細い曲がりくねった道でも,MX-6のフォグランプはステアリング連動式なので,暗闇の死角が少なく,すいすいと駆け抜けていく。
湯上り美人がいないことを確認し,がっかりしながら三朝を抜けると三徳山へとのぼっていく。ここでマツダスピードのサスキットの減衰調整がF3-R3 or R2が非常に気持ちいいことがわかったんだっけ。今日も,「しなやかに」ワインディングを駆け登っていくMX-6を体感してる。
そしていつのまにか,オーディオをoffにしていた。今日は,V6の咆哮だけを楽しみたい。
2,3速を多用しながら駆け上がる。マツダスピードのサウンドマフラーは装着したばかりでは,3000rpmまでしかいい音がしなかった。けど,年が経つにつれて高回転でもいい音が出るようになり,今では,6000rpm過ぎたあたりから,楽器のような澄んだ高音を発するまでになった。NA特有のキレのいい音だ。
頂上まで来ると,当たり前だが下りがくる。鹿野方面へ抜けるためのくだりはちょっとMX-6は苦手。フロントヘビーがもろに顔を出す。でも今日は張り切ってしまう。マツダスピードの軽やかなサスとレスポンス抜群のV6が僕に挑戦してくる。
でも,やっぱり気持ちいい。そりゃ筑波で1分4,5秒台を出すようなクルマとは速さを比べちゃイカンでしょうが,ハンドル切ればすっとノーズが向くし,ちゃんと荷重かけると切った分だけ曲がっていくし,アクセルを踏んだ分だけ加速を始めるのは,人馬一体っていうのかな。
昔,ロードスターに5日間乗りっぱなしだったことがある。オートマだったってこともあるけど,MX-6のほうがダンゼン楽しい気がしたなぁ。
最後の3連続ヘアピン。一個目はアンダーが出てしまった。タイヤに負担がかかってるのがわかる。サイドウォール半分まで削れてるな,きっと。
残りの2つは限界まで突っ込むことができなかった。カラダが三徳のコースをちょっと忘れてしまったみたいだ。僕の限界よりMX-6の限界が完全に上だな。
MX-6の乗りこなすことができなくなったのかな。ちょっと悲しくなった。
三徳の山を降りると鹿野まではしばしの直線。ハイペースの直線はMX-6はとてもラク。
重めのステアリング。どっしりと吸い付くような安定感を見せる足回り。低重心からくる安定感は,まさにGTの走り。
高速で移動してしまえば,鳥取〜新潟間とか,鳥取〜御殿場間をほぼノンストップ走行(そりゃトイレ休憩はしますよ!)したって,楽しいばかりでゼンゼン苦にならなかったなぁ。
鹿野を過ぎると今度は吉岡方面の小さい峠へ。ここはetudeに乗っていた頃からよく走った道。三徳よりさらに狭くなり,クルマ一台半くらいの道幅しかなく,短いスパンで次々ときついコーナーがやってくる。
数年前から週末になると二輪が練習に来るくらい,4輪にとっては厳しいコース。またもやMX-6には似つかわしくないステージだけど,ここは気に入っている。アクセルの使い方ひとつでもとても練習になるコース。
決して速いコースではないが,とても楽しい。アップダウン付ジムカーナみたいなコースだけど,ここまできついコースだと逆にMX-6特有,4WS特有のよく曲がる足回りが改めて体感できて楽しかった。いやでもタイヤに負担がかかるけどね。
そういえば,僕のMX−6はFFのクセに前後のタイヤの削れ方がほぼ一緒。グリップしないクセにタイヤの減り方だけはイッチョマエだったGRIDUにいたっては,ローテーションなしで終わってしまった。
それだけ4WSってのは仕事をしていたのかな。
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マツダお得意の4WS技術,ここに極まる。見よ,この切れ角!慣れたら,とっても気持ちよく感じてしまう!もう,この4WS無しでは生きていけない!? |
鹿野をこえると吉岡温泉。農道を登ると,星が綺麗なところがある。
etudeで初めてここへ来たとき,ちょっと夜空を見上げただけですぐ流れ星を見つけた。20数年生きてきて初めて流れ星を見つけたあの日から夜空を見上げることが好きになった。
流れ星って流れるのはホントあっという間。「あ,流れ星だ〜」「ホントだ〜」「願い事かなえなくちゃぁ。」と言うアニメやドラマで流れる流れ星はぜんぜん違うことがわかった。
「カネ,カネ,カネ。」と唱えるヒマもないぐらい。でも,カネだけゆったって神様は金をどうしたいのかわかんないよな。
あ,話がそれた。
流れ星を見るのが好き。だからMX-6もサンルーフ付を選んだ。今日ももちろん全開で走っていた。そして夜空を見上げた。曇っていた。・・・そう うまくはいかないもんだな。おまけに雨も降ってきた。
時計を見ると,今日が終わってしまう時間。
ロクよ,もう,帰ろうか。今までありがとう。ロクといると時間が経つのを忘れてしまうよ。
今度は音楽を聞きながら,ゆっくり帰ろう。
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ろくよ,本当にありがとう。たった7年間だけど君と共に走ってきたことを僕は誇りに思し,絶対に忘れないよ。 |
ロクよ,僕のそばにいてくれて本当にありがとう。