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お酒は二十歳になってから(山枡酒店)
Vol.10 ソムリエと酒屋のオヤジ
〜11/18ヌーボー解禁を前にして〜
先日、某酒造メーカーに新製品の商品設計をしたいからと呼ばれて行った。集まったのは、その酒蔵の杜氏、社長他1名、コーディネートした人、私の他酒屋1名、米生産者、新製品の販売元である。その中で、社長が私のことを紹介するのに「・・・ソムリエでもいらっしゃいます・・・」と言っていた。料理と酒のことを真剣に考えている身としては、ありがたいような気もするが、事実はそうではないので、ケツの穴がくすぐったいような感じがしたものである。
このソムリエというやつは、皆さんご存知のようにワインサービスのプロである。ソムリエのいるレストランでは、そのソムリエの質にもよるが、結構満足感を与えてくれたりする。身だしなみもバシッとしているし、エチケットも身につけているし、料理に合わせて酒も選んでくれる。
このソムリエ(女性はソムリエール)は飲食に携わる人達がとれる資格であり、小売店が取れるのは普通はワインアドバイザーってやつです。実技など無い分ソムリエ試験より簡単である。

最近は何でもかんでも「ソムリエ」がいる。ちょっとネットで検索しただけでも、フードソムリエ、お茶ソムリエ、紅茶ソムリエ、牛乳ソムリエ、野菜ソムリエ、本のソムリエ、温泉のソムリエ、旅のソムリエ、家造りのソムリエ、紙のソムリエ、芋ソムリエ、挙句には、入浴剤ソムリエ、出逢いのソムリエなんてのもいるらしい。
因みに今年の6月現在で日本中のソムリエの数はなんと約8,000人もいるらしい。フランスでは1,200人程度、イタリアでも800人程度。日本のワイン飲酒人口から考えて、異常に多い数字です。今年も5,000人の有資格者を想定している模様。
まぁ、身近にソムリエがいて色々教えてもらえるのはありがたい事で、歓迎すべき事かも知れませんがねぇ…。
なんで、こんな事になるのかね。日本ソムリエ協会は「日本」の協会。そしてソムリエ試験は国家試験ではない。つまり、協会は有資格者が増えれば増えるほど懐が暖かくなり笑いが止まらない。先に書いた、「なんとかソムリエ」ってのも、一つには名前の格好良さもあるのかもしれないが、資格産業として儲かる事を知っているからである。

そんな、隣の奥さんもソムリエールの時代ではあるが、圧倒的に格好良さはあるよね。酒屋のオヤジが「酒と食事」の事を語っても、真実味が無いような「気がする」のも仕方ない。酒屋のオヤジだって、外で食事するし、レストランにも行くんだけどね。きき猪口よりもタストバンの方が見栄えがするし、造り酒屋の前掛けより、ソムリエの黒のエプロンの方が頭良さそうだ。一升瓶の蓋は歯でペッなんて開けられるけどワインはソムリエナイフだし…。

酒屋のオヤジは、ソムリエの素晴らしさを知ってる。あの「よくそんな言葉思いつくなぁ」なんていう味や香りの表現。決して欠点を口にせず、すべてプラスに表現する能力。
これは、一つにはオーナー兼ソムリエの人以外、オーナーが銭をけちっていかに箸にも棒にもかからないような不味い酒を仕入れてこようとも、お客さんに飲んでもらわなければ、営業成績が残せないってことも原因なのだ。ひねくれているかも知れないが、そう考えればソムリエが営業上、おいしいと言っても本当かどうかは自分の舌だけが頼りである。
一方、酒屋のオヤジは、雇われ店長以外は自分で仕入れてくるのであるから、味が気に入らなければ仕入れない。万が一仕入れたにしても、馬鹿オヤジは「旨いか?」と聞かれれば正直に「不味い」と答える。
「ワインをいつも飲んでいます。知り合いにもソムリエやソムリエールがいて、料理屋さんに行っても、いつも、マリアージュを考えるクセがついていますの。オホホホ」、「ワインはお料理と合わせやすいですが、日本酒はどうでしょ・・・」なんていうお嬢様を(年は知らないが)知っている。上に書いたような事実に鑑みて、どう思う?
ソムリエで世界にはばたく人はみんな日本酒にもある程度詳しくて、「無理やり和食にワインをあわせなくても、日本酒があるじゃないですか」って言う。実際、生臭いものや醤油にワインよりも日本酒が合うし、鍋にワインなんて…。
酒屋のオヤジは日本に住んで、日本酒蔵に出向いて(出向かなくても電話やメール、FAXに手紙で)酒の造りを論じる。8,000人近いソムリエ達は、やはりワイン原産国に出向いて・・・、いやあらゆる手段でも構わない・・・、ワイン造りに対して論じることがあるのだろうか。造り手にダイレクトに伝える能力があるだろうか。

一つだけ確実に言える。国酒を語れないソムリエはインチキである。
(2004/10/24)
コラム :  「(有)山枡酒店」 倉吉市新陽町11−2
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